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フィギュア撮影日誌:ガラスケースの中の人形が息を吹き返す瞬間

スマートフォン一台とA4用紙一枚でフィギュア撮影の8割は解決します。光源一つをどこに置くかが、デコマス写真に近づけるか、SNSで埋もれるかを分けます。大切なのは機材ではなく、光を読む目です。

フィギュア撮影日誌:ガラスケースの中の人形が息を吹き返す瞬間
Photo: Danny Choo / CC BY-SA

スマートフォンのカメラロールに溜まった失敗作たち

ガラスケースの扉を開けてスケールフィギュアを取り出し、スマートフォンを手に取ります。シャッターを切ります。画面に映った写真を見てため息をつきます。確かに目の前のフィギュアは美しいのに、写真の中では髪のグラデーションもスカートの襞の立体感も死んでいます。この経験は2010年代半ばにスマートフォンのカメラが普及して以降、ほぼすべてのコレクターが通る通過儀礼となりました。私が初めて撮影に興味を持ったのは2014年、グッドスマイルカンパニーの雪風(艦隊これくしょん)1/8スケールを手に入れた後でした。ガラスケースの中では輝いていた白い制服が写真では白く飛んでしまい、SNSにアップした写真の下のコメントは「実物の方がお綺麗でしょうね」でした。

結論から申し上げます。フィギュア撮影で最も重要なのは機材ではなく光の方向です。デジタル一眼レフやミラーレスがなくても、三脚や照明機材を買わなくても、光源一つをどこに置いてカメラをどの角度に傾けるかさえわかれば、SNSで反応が来る写真を手に入れることができます。逆に数十万円のカメラを持っていても光を知らなければ、フィギュアは平坦なプラスチックの塊として写ります。この記事は機材レビューではありません。ガラスケースの扉を開けてスマートフォンを手に取り、シャッターを切るまでに手がすべきことを記した記録です。

光はなぜフィギュアを生かしたり殺したりするのか

フィギュア原型師は造形する際、光が当たる面を計算します。髪の毛一本一本の方向、衣服の襞の深さ、台座の段の高さまで、すべて特定の角度から入った光が影を作って立体感を生かすよう設計されます。デコマス写真を見ると髪の先端が輝き、スカートの内側が陰影で深く見える理由は、照明の方向が原型の意図と一致しているからです。逆に蛍光灯の直射光の下で撮ると、すべての面が均等に明るくなって影が消え、立体は平面になります。

2017年のワンダーフェスティバルで見たあるディーラーのブースが記憶に残っています。ガレージキット(無塗装レジンキット)を展示した机の上にLEDスタンド一つだけを斜めに立てていたのですが、同じ原型を他のブースで見たときよりもずっと立体的に見えました。光は上方45度の角度から入り、顔の顎のラインと鼻の横に浅い影ができて表情が生き生きとしていました。そのディーラーは照明機材を売る人ではなく原型師で、自分の作品がどの角度で光を受ければ最も美しく見えるかを知っていました。私はその日ブースの前に10分立ち尽くした後、スタンドの位置をスマートフォンのメモ帳に書き留めました。

撮影初心者がよくする失敗は、フィギュアを正面から撮ることです。正面光は顔を明るく照らしますが、同時に影を消して表情を平坦にします。横から光が入ることで、鼻の高さ、目元の深さ、唇のボリュームが影として現れます。光源とカメラが互いに異なる方向にあるとき、フィギュアは初めて三次元として見えるのです。

Photo: animaster / CC BY

窓一つから始める自然光撮影

最も簡単な光源は窓です。晴れた日の午前10時から午後2時の間、直射日光ではなく空から降り注ぐ拡散光が最も柔らかいです。フィギュアを窓際に置きつつ日光が直接当たらない位置に配置し、カメラは窓の反対側からフィギュアに向けます。このとき背景は白い壁やA4用紙が良いでしょう。光が紙に反射してフィギュアの後方をほのかに明るくし、背景はすっきりとした白になります。

私が2015年にアルターの春日野穹(ヨスガノソラ)1/6スケールを初めて撮影したとき使った方法がこれでした。窓際の机の上に白い画用紙を敷いてフィギュアを立て、反対側からiPhone 5Sで撮りました。白いワンピースのレースディテールが窓から入った光を受けて影でパターンを描き、顔の左側にできた浅い陰影が表情に深みを加えました。その写真は今でも私のSNSのプロフィール写真として使っています。機材は中古で10万円もしないスマートフォンでしたが、光の方向さえ合っていれば十分でした。

ただし、夏の真昼の直射日光は避けるべきです。明暗のコントラストが強すぎてハイライトは飛び、影は真っ黒に潰れます。曇りの日の拡散光の方がむしろ撮影しやすいです。光が柔らかく影が自然で、後補正なしでも使える仕上がりになります。

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LEDスタンドとA4用紙で作る室内光源

窓がない、あるいは夜に撮影しなければならない場合は、LEDスタンド一つで解決できます。色温度は5000K前後の昼光色がフィギュア本来の色味を最も正確に再現します。電球色(3000K)は温かみがありますが白いフィギュアが黄ばんで見え、昼白色(6500K)は冷たく硬い印象を与えます。光源はフィギュアの上方斜めに置きつつ、直接照らさずA4用紙に反射させます。こうすると光が拡散して影が柔らかくなり、表面の質感が自然に生きてきます。

2018年にねんどろいど初音ミク:マジカルミライ2018Ver.を撮影したとき、この方法を使いました。LEDスタンドをフィギュアの左上に置いて白い紙に光を跳ね返しました。ツインテールの透明パーツが光を受けて緑色のグラデーションを作り、顔の右側にできた浅い影がねんどろいど特有の丸い顔に立体感を加えました。反対側には別のA4用紙を立ててレフ板として使い、影が濃くなりすぎないよう補正しました。写真一枚撮るのに10分かかりましたが、SNSにアップしたとき「公式商品写真みたい」というコメントをもらいました。

インターネットのコミュニティでは時々リングライトやソフトボックスを勧める投稿を見ます。もちろん良い機材ですが、フィギュア撮影では過剰かもしれません。リングライトは影をほぼ消してしまい人形が平面に見え、ソフトボックスはサイズが大きくて狭い部屋では使いづらいです。スタンド一つと紙数枚で同じ効果を出せます。

Photo: DocChewbacca / CC BY-SA

アングルと構図:フィギュアはどこから撮れば美しいか

デコマス写真を見ると、ほぼ必ずフィギュアを目線よりやや低い角度から撮っています。これをローアングル(low angle)と言いますが、人形が大きく堂々として見える効果があります。逆に上から見下ろして撮るとフィギュアが小さく見え、顔の表情がきちんと現れません。スマートフォンを持つ手を机の高さまで下げてレンズがフィギュアの胸から顔の間のどこかを向くようにすれば、全身が入りつつも表情がはっきりと見えます。

構図の基本は三分割法です。画面を縦横3等分する線を引いたとき、その交点にフィギュアの顔や中心が来るよう配置すると、安定感がありながらもダイナミックな印象を与えます。ど真ん中に置くと静的で堅苦しく見えます。スマートフォンのカメラ設定で「グリッド線」オプションをオンにしておくと、撮影時に三分割線が画面に表示されて構図を決めやすくなります。

2019年のワンダーフェスティバル当日版で手に入れた無塗装ガレージキットを組み立てた後の撮影で、私はフィギュアを画面の左側1/3の位置に置いて右側の余白を空けました。キャラクターの視線が右を向いていたため、視線が向かう方向に空間を置くと自然に見えます。これを「視線空間(looking space)」と言いますが、人物写真撮影の基本原則がフィギュアにもそのまま適用されます。

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背景整理と補正:写真を台無しにするもの

どんなにフィギュアが美しくても、背景に雑然とした物が見えると写真全体が散漫になります。撮影前にフィギュアの後方1メートルの範囲を整理する習慣をつければ、後補正の時間を大幅に短縮できます。白い壁が最も無難で、壁がなければ白い布や模造紙を立てかければ済みます。コミュニティでたまに見る「フィギュアは綺麗なのに後ろに洗濯物干しが見えます」といった失敗は、背景整理3分で避けられます。

スマートフォンで撮った写真は、ほとんどの場合露出(明るさ)や色温度がわずかにずれています。基本のギャラリーアプリの補正機能だけでも十分に手を加えられます。明るさを少し上げつつハイライト(最も明るい部分)は下げて飛ぶのを防ぎ、シャドウは少し持ち上げてディテールを生かします。彩度はいじらないか、ごくわずかに上げる程度にします。過度な彩度補正はフィギュアをプラスチックのおもちゃのように見せてしまいます。

私がよく使う無料アプリはSnapseed(スナップシード)です。「ディテール」機能でフィギュア表面の質感を鮮明にし、「部分調整」で顔の部分だけ明るさを上げて強調できます。2020年にアルターの遠坂凛(Fate/stay night)1/7スケールを撮影した後、顔の部分だけ明るさを10%上げてシャープネスをわずかに高めたところ、瞳のハイライトがくっきりして生気が宿りました。補正時間は5分で、元の写真と比べると違いは明確でしたが、やりすぎではありませんでした。

Photo: Mk2010 / CC BY-SA

ガラスケースの中での撮影は可能か

多くのコレクターがガラスケースの中にフィギュアを置いたまま扉を閉めて撮影しようとします。埃や変色を防ぐためにガラスケースに保管するのは当然ですが、ガラス越しに撮ると反射と歪みが生じます。ガラス表面に蛍光灯や窓が映り込み、カメラのレンズ自体が反射して写真に点として写り込むこともあります。ガラスケースのLEDをつけて撮ると反射はさらに激しくなります。

最もすっきりした方法はガラスケースの扉を開けてフィギュアを取り出して撮ることです。ただし毎回取り出すのが面倒なら、ガラスにぴったり寄せて撮影すると反射を減らせます。レンズをガラスにほぼくっつけるようにして、周囲を黒い布や服で覆って光が漏れないようにすると、ガラスがほぼ透明に見えます。この方法は2016年に日本の中古ショップの陳列棚を撮影したときに学んだ技術ですが、フィギュアに触れられない状況で役立ちます。

ガラスケース内部のLEDだけで撮るとほとんどの場合失敗します。LEDの色温度が合わずフィギュアが黄色や青く写り、光の位置が固定されているため影の方向を調整できません。外部光源を追加するか、いっそガラスケースのLEDを消して窓際にガラスケースを移動し、自然光で撮る方がましです。

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撮影が教えてくれたフィギュアの見方

フィギュアを直接撮り始めてから私が得た最大の変化は「見る目」でした。ガラスケースに入れて通りすがりに見るだけだったときは気づかなかったディテールが、カメラのファインダーを通して見ると一つ一つ目に入ってきます。髪の先端のクリアパーツ処理、服の襞の内側の陰影塗装、指一本一本の自然な曲線まで——撮影はフィギュアを鑑賞する方法そのものを変えました。

2021年にグッドスマイルカンパニーのレム(Re:ゼロから始める異世界生活)1/7スケールを撮影しながら、私は初めて台座の質感までクローズアップで撮ってみました。木目を模した塗装が予想以上に精巧で、縁の埃の表現まで細かく入っていました。ガラスケースに立てて見ていたときはまったく目につかなかった部分でした。その日以降、私は新しいフィギュアを受け取ったらガラスケースに入れる前に必ず一度撮影します。カメラは私の目より几帳面です。

撮影記録をSNSにアップして他のコレクターと交流する楽しみも生まれました。同じフィギュアを違う角度、違う光で撮った写真を見て「こんな表情も出るんだな」という発見をし、撮影のコツを交換して腕が上がりました。フィギュア収集が「買って集める」趣味だったとすれば、撮影は「観察して記録する」趣味として一段階深まりました。

FAQ

スマートフォンとカメラのどちらを買うべきですか?

スマートフォンから始めてください。2020年以降発売された中級以上のスマートフォンなら、フィギュア撮影に十分な画質を出します。光の方向と構図を身につけた後でも、さらに良い仕上がりが必要だと感じたときにカメラを検討しても遅くありません。機材より光を読む目が先です。数十万円のカメラを買っても蛍光灯の下で正面から撮ればスマートフォンより良くなることはありません。

三脚は必ず必要ですか?

手ブレがひどい、あるいは暗い場所で撮影するなら役立ちます。スマートフォン用ミニ三脚は1万円台で手に入り、机の上に置いて使うのに適しています。ただし手持ちで撮っても最近のスマートフォンの手ブレ補正性能が非常に良いので大きな問題はありません。三脚より光源の位置を調整することに時間を使う方が、仕上がりの改善により効果的です。

フィギュアのクローズアップ撮影でぼやけてしまうのですが、どうすればいいですか?

スマートフォンのカメラをフィギュアに近づけすぎるとピントが合いません。最短撮影距離は機種によって異なりますが、だいたい10〜15cm程度です。近すぎる場合は一歩下がって撮った後、写真をトリミング(切り抜き)する方が良いでしょう。画面を指で押してマニュアルフォーカスを合わせ、顔や強調したい部分を正確にタップすると鮮明度が上がります。

背景をぼかしてフィギュアだけはっきり撮りたいのですが可能ですか?

スマートフォンのポートレートモード(ボケモード)を活用すると背景をぼかすことができます。ただしAIがフィギュアと背景の境界を誤認識して髪や小さなパーツが切れてしまうことがあるので、撮影後に仕上がりを拡大して確認してください。自然な背景ぼかしは被写体と背景の間に十分な距離を取り、フィギュアにできるだけ近づいて撮ると得られます。カメラで撮影するなら50mm以上の単焦点レンズと開放絞り(f/1.8〜2.8)を使うと効果が顕著です。

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今日も皆さんのガラスケースに良いご縁がありますように。

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