ガラスケース内のフィギュアがSNSで違って見える瞬間
2019年の夏、初めて自分のフィギュア写真がTwitterで500リツイートを超えました。グッドスマイルカンパニーの1/7スケール、ホシノ・ルリ2016年再版品でした。ガラスケースに入れてある実物より写真の方がずっと綺麗に見えるというコメントが付きました。それまで私はスマートフォンで何気なく撮っていただけでしたが、いざガラスケースの前で実物を見ると、その感動が半分にも満たないという事実に気づきました。同じフィギュアなのに、なぜ写真と実物の印象が違うのでしょうか。結論から申し上げると、照明の方向と背景のコントロール、そしてカメラレンズが作る圧縮効果がフィギュアの印象を完全に変えるのです。
ガラスケースは四方から光が入ります。天井灯、窓、反対側の壁の反射光まで。一方、撮影環境では光の方向を一つに整理できます。この違いがフィギュアの立体感を決定します。2017年のfigma写真展で見たプロ写真家の作業では、たった一つのスポットライトだけでフィギュアの輪郭を活かすシーンが印象的でした。光が多ければ良いというわけではなく、光の方向が明確な時に造形が生きるのです。
スマートフォンカメラがガラスケースよりフィギュアを綺麗に撮る原理
スマートフォンカメラの広角レンズは、被写体と背景の距離を圧縮します。ガラスケースの前で目で見る時は、フィギュアの後ろの他のフィギュアたち、壁紙の模様、本棚の端まで視野に入りますが、カメラは絞りと焦点距離で背景を飛ばしてしまいます。2020年のiPhone 12 Pro以降、スマートフォンに搭載されたポートレートモードはフィギュア撮影にも適用されます。背景ぼかし効果がフィギュアを主役にします。
レンズの画角も重要です。35mm換算24mm広角で近づいて撮ると、フィギュアが歪んで見えます。特に1/8スケール以下の小型フィギュアは頭が大きくなり、脚が短くなります。50mm標準画角以上で一歩後ろに下がって撮らなければ、デフォルメなしに造形が伝わりません。Galaxy S21以降のフラッグシップスマートフォンは2倍望遠レンズを標準搭載していますが、これがフィギュア撮影にはむしろ有利です。私は今でもiPhoneの2倍ズームで撮影しています。
露出補正も印象を変えます。スマートフォンカメラは基本的に画面全体を明るくしようとします。白いブラウスを着たキャラクターを撮ると服のディテールが飛び、黒い服を着たキャラクターは全体が灰色がかって写ります。露出補正スライダーを-0.7程度下げて撮ると、色が濃くなり明暗が生きてきます。2018年にねんどろいどイズミ・サクラを撮った時、この方法で制服の黒色を properly 活かせた記憶があります。
LED照明一つが作る違い:角度と高さの文法
白色LEDスタンド一つあるだけで撮影レベルが変わります。天井から降り注ぐ蛍光灯は、フィギュアの顔の下に影を作ります。目の下が暗く、顎の下が黒く見えます。LEDスタンドをフィギュアの正面45度の位置、目線の高さから30度上に立てると、顔に自然な立体感が生まれます。アルターの1/7スケール、遠坂凛2015年版を初めて撮影した時、照明の高さだけ調整して瞳のハイライトを活かした経験があります。
距離も重要です。LEDをフィギュアから30cm以内に近づけると光が強すぎてハイライトが飛び、1m以上離すと光が弱くなって全体が暗くなります。50~70cmが適正距離です。私は卓上用クランプ式LEDスタンドを本棚の端に固定して使っています。角度を自由に曲げられ、高さ調整が可能な製品であれば十分です。2万円台の製品でも色温度調整機能があれば撮影用として使えます。
色温度は5000Kの昼光色が基本です。3000Kの電球色は温かく見えますが、フィギュア本来の色味を変えてしまいます。特に白い肌や淡いパステル系の衣装は黄色がかって写ります。6500Kの昼白色は冷たく清涼な感じを与えますが、肌トーンが蒼白になります。グッドスマイルカンパニーの公式商品写真がほとんど5000K台の照明で撮影されているのには理由があります。中立的な色温度が塗装のディテールを最も正直に見せるのです。
背景一つで変わるもの:白色ケント紙と黒ベルベットの選択
撮影背景は大きく二つに分かれます。白色無反射背景と黒色吸光背景。白色ケント紙はフィギュアを明るく綺麗に見せます。ねんどろいどやfigmaのようなデフォルメフィギュア、明るい色の衣装のキャラクターに合います。A3サイズのケント紙を二枚重ねて曲線で立てれば、即席撮影ブースになります。2021年にねんどろいどかぐや様を撮影した時、この方法で背景を飛ばしました。
黒いベルベット布は光を吸収して背景を完全に暗くします。金属パーツが多い鎧型フィギュア、暗い色の衣装のキャラクター、鋭い雰囲気を強調したい時に使います。アルターの1/8スケール、セイバーオルタ2013年版を撮った時、黒背景で鎧の銀色の光沢を活かした記憶があります。ベルベット布はダイソーで1mあたり3000円で売っています。皺ができないように伸ばして保管するのが肝心です。
グラデーション背景も試す価値があります。白色から灰色へぼかす背景紙、空色から白色へ繋がる背景は、フィギュアに空間感を与えます。プロカメラマンが使う無限背景紙(seamless paper)は幅1m品が2万円台からありますが、一般コレクターには過剰です。A2サイズのグラデーション用紙をネットで注文すれば1枚2000円です。一枚で1/7スケール1~2体は十分に撮影できます。
構図の基本:フィギュアは正面ではなく15度ずらして撮る
初心者はほとんどフィギュアを正面から撮ります。台座を正面に置き、カメラを正面から水平に構えます。こう撮ると平面的でつまらなくなります。フィギュアは立体造形なのに2Dイラストのように見えます。フィギュアを15~30度ひねって置くと、側面の輪郭線が生き、衣装の皺や髪の毛の流れが現れます。2016年にコトブキヤの1/7スケール、アスナを撮影した時、右に20度ひねってスカートのプリーツラインを活かした経験があります。
カメラの高さも重要です。目線の高さで撮ると、キャラクターと視線が合う感じを与えます。低いアングル(ローアングル)から見上げるとキャラクターが堂々として見え、高いアングル(ハイアングル)から見下ろすと可愛く儚い印象を与えます。1/8スケール以下の小型フィギュアはローアングルで撮ると存在感が増します。figmaサイズは床にカメラをほぼ付けて撮らなければドラマチックになりません。私はスマートフォンを床に寝かせてタイマー撮影で撮ります。
三分割構図が最も無難です。画面を縦横3等分した線が交わる四つの点のいずれかに、フィギュアの顔や中心軸を置けば安定的です。中央配置より緊張感が生まれ、背景に余白ができて視線が楽になります。2019年にマックスファクトリーの1/7スケール、レム&ラムセットを撮った時、二体のフィギュアを左右の三分割地点に配置してバランスを取った記憶があります。
レタッチはどこまで許されるか:色調整とフィルターの境界
撮影後のレタッチは必須です。スマートフォンカメラが自動補正する色味が常に正確とは限りません。特に白背景で撮ると全体が明るくなり、フィギュアの色が薄くなります。露出を-0.3~-0.7程度下げ、彩度を+5~+10上げると本来の色味に近づきます。2020年にねんどろいどホシノ・アイを撮った時、髪の毛の紫色が灰色に写ったため、彩度を+15まで上げた経験があります。
明暗コントラスト(contrast)を上げると立体感が強まります。しかし+20以上上げるとハイライトが飛び、影が潰れます。+10前後が適正ラインです。ハイライトとシャドウを個別に調整できるアプリ(Snapseed、Lightroom Mobile)を使えば、より精密に整えられます。私はハイライトを-10~-15下げて白いブラウスのディテールを活かし、シャドウを+5~+10上げて暗い部分の情報を引き出します。
フィルターは慎重に使います。Instagramの基本フィルターはほとんどが色味を誇張したりヴィンテージ感を追加します。フィギュア本来の塗装を歪めるフィルターは避けます。「Vivid」や「Pop」のような彩度強化フィルターは色味が浮いて安っぽく見えます。「Noir」や「Mono」のようなモノクロフィルターはドラマチックですが、塗装ディテールが消えます。私はレタッチなし(Original)か微調整だけ可能なフィルターを使います。2018年のワンダーフェスティバルで買ったガレージキットを撮影した時、フィルターなしで原色を活かしたのがむしろ好評でした。
撮影趣味がフィギュアを見直させる瞬間
撮影を始めるとフィギュアを違う目で見ます。ガラスケースに入れる時は全体のシルエットだけ見ますが、カメラのビューファインダー越しに見るとディテールが見えます。髪の毛先のクリアパーツ、スカート裏地のグラデーション、爪に塗られた淡いピンク色。2017年にアルターの1/8スケール、佐倉杏子を撮った時、スカートのひだの内側に隠されたシェーディンググラデーションを発見しました。3年間ガラスケースに立てていたのに一度も見たことのないディテールでした。
照明角度を変えると原型師の意図が見えます。正面照明では平面的だった顔が、側面照明では鼻の高さと頬の曲線が生きてきます。フィギュア原型師は特定の照明環境を想定して造形します。展示場のスポットライト、ガラスケースの上から降り注ぐ照明。撮影しながら様々な角度で光を当ててみると、「ああ、この角度で見ろと作ったんだな」と思う瞬間が来ます。2019年にグッドスマイルカンパニーの1/7スケール、霞ヶ丘詩羽を撮った時、左45度上方から光を当てたら髪のウェーブが劇的に生きました。
撮影記録はフィギュア購入判断にも影響を与えます。予約段階で見た彩色見本(デコマス)写真と実際の量産品を自分で撮影した写真を比較すると、差が明確に見えます。2020年に特定メーカーの1/7スケールを受け取って撮影したところ、デコマスで鮮明だった瞳のグラデーションが量産品では潰れていました。以降、そのメーカーの新作を予約する時はより慎重になりました。撮影はコレクターの目を養います。
機材を増やす前に手元にあるものから習得する方法
撮影コミュニティに行くとDSLR、ミラーレス、マクロレンズ、三脚、ライトボックスの話が出ます。しかしスマートフォンとLEDスタンド、白い紙さえあれば始められます。2015年にiPhone 6sで撮ったフィギュア写真が今でも私のTwitterトップ固定ツイートです。機材ではなく光の方向と構図が決定します。
撮影技術は機材ではなく試行錯誤の量で向上します。同じフィギュアを一度に50枚撮ってみてください。照明を左、右、上、前から当ててみて、カメラを目線、ローアングル、ハイアングルから構えてみて、背景を白、黒、グレーに変えてみてください。50枚中10枚は救えるレベルで、そのうち1枚はSNSに上げられます。2018年にコトブキヤの1/8スケール、結城明日奈を100枚以上撮ってから初めてまともな構図を見つけました。
他人の写真を見るのも勉強です。グッドスマイルカンパニー公式Twitter、アルター公式ブログ、日本のフィギュア撮影ハッシュタグ(#フィギュア撮影)をフォローしてください。プロの写真と自分の写真を比較すると何が足りないか見えます。照明方向、背景トーン、構図、露出。2019年にある日本人コレクターのフィギュア写真を見て「黒背景に側面照明」を学び、その方法で私の撮影レベルが一段階上がりました。
FAQ
スマートフォン撮影でも十分ですか?DSLRが必須ですか?
スマートフォンで十分です。2018年以降のフラッグシップスマートフォンは絞り、シャッター、ISOを手動で調整でき、2倍以上の望遠レンズを搭載しています。フィギュアは動かないので手ブレさえ気をつければ鮮明に撮れます。DSLRは背景ぼかしと低照度性能が優れていますが、初期投資費用が50万円以上です。スマートフォン撮影から習得し、限界を感じた時に機材を増やしても遅くありません。
LED照明はどんな製品を買えばいいですか?
色温度調整機能があり、角度を自由に曲げられるクランプ式デスクスタンドで十分です。明るさは500~1000ルーメン、色温度は3000K~6500K調整可能な製品が2~3万円台であります。撮影専用のリングライトやソフトボックスは5万円以上ですが、最初から必要ありません。クランプ式LED一つで1年以上使ってからアップグレードしても構いません。
背景はどこで手に入れますか?専用撮影ブースが必要ですか?
A3サイズのケント紙や白色画用紙を文房具店で買えば1枚1000円です。2枚をL字に立てれば即席背景になります。黒いベルベット布はダイソーやネットの生地ショップで1mあたり3000~5000円です。専用撮影ブース(ライトボックス)は3万円台からありますが、1/8スケール以上の大きなフィギュアは入りません。机の上に紙背景を立てる方が柔軟です。
レタッチアプリは何を使えばいいですか?
Snapseed(スナップシード)とLightroom Mobile(ライトルームモバイル)をお勧めします。どちらも無料で、露出・彩度・コントラスト・色温度を精密に調整できます。Snapseedは部分補正機能が強力で、フィギュアの顔だけ明るくしたり、背景だけ暗くできます。Lightroomは色調プリセット(フィルター)を保存して複数の写真に一括適用できます。Instagram基本フィルターはフィギュア本来の色を歪めるので避けてください。
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撮影はフィギュアを二度鑑賞する行為です。ガラスケースの前で一度、カメラのビューファインダーの中でもう一度。同じフィギュアなのに光の角度一つで印象が変わり、構図一つで存在感が増します。機材ではなく視線の高さと光の方向が写真を決定します。今日も皆様のガラスケースに良いご縁が訪れますように。